五木の木遣り唄を紐解く。


先日の五木の子守唄祭での木遣り実演の際には、
木を引き上げる際の掛け声として、節のついた
唄みたいなもの?を歌われていたような気がします。

木遣り唄はただの歌謡ではなくて、
「せーの!」という掛け声の代わりになる、
先導する歌い手と、合いの手とが一緒になる
生活の歌なんだなーと思いました。

どんな歌詞で、どんな節だったか分からないのですが、
『五木の民俗』に、木遣り唄が2つ紹介されていました。

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 木おろし唄 


今日は朝から天気も良いがヨー 
昨日のしめりで足元すべる
どれもどなたも用心なされ ヤイヤー

向こうの松山でナバ取る娘ヨー
こずまからげてしおらしや
俺がカカとは段違い ヤイヤー

枝は切れても用心なされヨー
かかりカズラの戻りがこわい
山の神様お守り頼む ヤイヤー

俺は木おろし 山の神の家来
天狗どんならおろし鉤ゃ要らんが
鉤を頼りに今日の日も暮れた ヤイヤー

今日もご無事で木おろしゃ済んだヨー
うちじゃカカさま世話して待つよ
どれも、どなたも そうじゃ また明日 ヤイヤー

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「こずま」とは何ぞや???
五木方面の言葉も入っていて、
次の「松ばえさん」よりは地元文化の香りを感じますが、
最初聞いた時に何を言ってるか分からなかったほど
五木弁が強く盛り込まれた「五木の子守唄」に比べると、
ちょっと上品すぎる感じがしますね・・・。

続いて、もう一つの木遣り唄。

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 松ばえさん(松前木遣り) 


一で日の本 ヤーエ
(アラ ヤットコセー ヨーヤナ)
一で日の本 大日如来 ヨーイトセー
(ソコソコ ハレワノヨイヨイ ヨーイトコ ヨーイトコセー)

二ではにかたの ヤーエ 
二ではにかたの白山さまよ

三で讃岐の ヤーエ
三で讃岐の金毘羅さまよ

四はは信濃の ヤーエ
信濃の善光寺さまよ

五つ出雲の ヤーエ
出雲の縁組みさまよ

六つ武蔵の ヤーエ
武蔵の六地蔵さまよ

七つ難波の ヤーエ
難波の天神さまよ

八つ八幡の ヤーエ
八幡の八幡さまよ

九つ高野の ヤーエ
高野の弘法大師

十 ところの ヤーエ
ところの氏神さまよ 

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この木遣り歌、歌詞が全国の有名な神社を入れつつ
韻を踏んだ数え唄になっていて、なかなか興味深いです。

松前木遣り歌は、
元々は、伊勢神宮の氏子が歌った「お木曳き木遣り」が
お伊勢参りと共に全国に浸透して、松前藩に入って
「松前木遣り歌」になったものだそう。
全国にあるんでしょうか。

と思ったら、石川県七尾市の青柏祭での
でか山(曳山)の木遣り歌に、そっくりな歌詞が載っていました。
こちら

二の「にかた」は「新潟」で、
新潟の白山神社のことのよう。

三の讃岐の金毘羅は、言わずもがなで
全国の金毘羅さんの総本社、香川県の金刀比羅神社でしょう。

四の信濃の善光寺も有名。
信州長野市の善光寺ですよね。

五の出雲の縁組みさまも、説明不要で
出雲大社

六の「武蔵の六地蔵」さまはどこだろう?
六地蔵は全国各地にあるし、
江戸六地蔵」というのがあるそうなので、
そのことでしょうか?

なお、他は神道なのに、
この六番は仏教系ですね。
上記青柏祭の木遣りでの六番の歌詞は、
「六つぁ 村々の 鎮守さまよ」となっています。

七の「難波の天神さま」ですが、
菅原道真を祀った天神様、天満宮は津々浦々にあります。
大阪天満宮のことでしょうか

なお、ここも青柏祭での歌詞では
「七つぁ 七尾の 山王様よ」になっていて、
この青柏祭の祭神の石川県七尾市の大地主神社(山王神社)の
ことになるようです。

八の「八幡の八幡さま」は、
音的には「はちまんのはちまんさま」ではなく、
「やはたの~」「やわたの~」なんでしょうが、
八幡も津々浦々に地名や神社名としてあります。
八幡の本社は、大分の宇佐八幡だけどあまり関係ないみたいで、
どこの八幡なんだろう?

九の「高野の弘法大師」ですが、
これも韻を踏んでいない。そして仏教系。
真言宗の総本山、和歌山県金剛峯寺ですね。

十の「ところの氏神さま」ですが、
氏神さまこそ、全国各地に無数にあるので
特定の氏神さまではないんでしょうね。


五木村での実際の山仕事で、木遣り唄を歌った世代もご健在なはずなので、
ぜひ一度、生歌を聞いて、歌詞やメロディを記録しておきたいものです。

(いずれも『五木の民俗』(五木村民俗調査団編、1993年)より)

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by from_itsuki | 2010-12-01 15:44 | 五木の生活文化

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